4話
社務所に戻ってきた三人と狐は、しばらくの間、黙って座り込んでいた。
「標的は分かりましたけど、この後、どうしますか。本当に管轄外ですよ」
祐斗が、のろのろと人数分の茶をいれつつ、むつと颯介の顔を見ていた。
年長者である颯介も、退くべきかどうかを決めかねているようだ。
「保健所に連絡?信じて貰えるかな?」
むつも何も言わなかった。相当、考えに集中しているのか、ろくに吸っていないタバコがほとんど灰になっている。
床に散らばった、祐斗の手描き地図、資料館からのパンフレットに冬四郎からの資料を眺めていたむつが、ふいに顔を上げた。灰の長くなったタバコを消し二本目に火をつけた。
「あの、さ。狐さんが言ってた話覚えてる?山組は山賊の子孫って話。それと蜘蛛って繋がってると思うの」
溜め息と一緒に煙を吐き出しながら、むつはたぶんだけどね、と言った。
「山賊って事はさ、政府や国に従わなかったって事だと思うのね。で、蜘蛛。繋がったでしょ」
颯介も祐斗も、狐たちでさえもが、さっぱり分からないって顔だった。
「天皇に恭順しなかった領主たちの事を土蜘蛛って言うの。これは日本の各地にあって、珍しい物じゃない」
「まったく繋がらないっすよ‼ただたんに、土蜘蛛って呼ばれる人らがいたってさだけの話じゃないですか‼」
「確かにね。わたしは、もう少し調べてみるよ。二人は下りてもいい」