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3話
颯介の言う通りだった。大したダメージを与える事も出来ず、圧され気味の今はこの場から、離れるしかないだろう。
むつは、悔しそうに唇を噛み締めた。
「分かった。わたしが引き付ける」
そう言い、むつは背中を向けて走り出した。車を通り過ぎ、先程の廃屋の前まで行くと、くるっと蜘蛛と向き合い正面から突っ込んだ。
「むっちゃん!」
蜘蛛の足の間をすり抜けながら、何枚も人形を投げつけた。それらは、意思を持ってるかのように、しっかりと蜘蛛の足や腹、目にしがみついた。
「ノウマク・サンマンダ・バザラダン・カン」
むつが力強く言うと、人形は燃え始めた。威力はあまりなくとも数はある。ぎちぎちと顎を鳴らし、蜘蛛はもがくように林の中に消えていった。
肩で息をしているむつが、よろけ、そのまま倒れこんだ。
「むっちゃん‼」
「大丈夫、充電切れ」
颯介に抱き抱えられ、車に乗せられた。
とりあえずの危機は去ったようだ。