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3話
廃屋の前までくると、むつと祐斗はそっとドアを押した。雨風で劣化していたのか、金具が折れてドアが倒れた。
土埃が舞った。
むつと祐斗は、袖で口元を押さえながら、埃が落ち着くのを待った。
「ここは、かなり前から人がすんでないみたいだね」
颯介が先に入り、玄関を見回して廊下を進んでいく。歩くたびに、ぎしっぎしっと床が鳴り、今にも抜けそうだ。
「祐ちゃん何か視える?」
むつが、きゅっと祐斗の手を握った。
「いえ、特には何も。ここには、何もないんじゃないですか?」
「うん、蜘蛛の巣も多いけど、まぁ…廃屋ならこんなもんなのかな?わたしの考えは外れたかな」
「その方が有り難いです」
「颯さん、ここには何もないと思う」
出よう、と言ったが颯介は、首をふり二人を手招きして呼んだ。颯介の居るリビングの方に向かうと、蜘蛛の巣がびっしりと張られていた。
「鼠なんかも餌になってるみたいだ」
「なかなか食欲旺盛なこった」