3話
むつの提案で、人が住まなくなった場所までやってきた。道は細く車が通った痕跡もほとんどなく、木や雑草が生い茂っていた。
途中から、車では無理だろうと車から降り歩く事になった。
「むつさん」
足場が悪いから、掴まってもらおうと祐斗が手を出すと、何の躊躇いもなく握ってきた。そして、そのまま歩いていく。
祐斗が引っ張られる形でだ。
「あ、あの、むつさん?」
「ん?手繋ぎたいんじゃなかったの?」
少し熱くしっとりした肌のむつの手。
「いや、はい」
熱でぼんやりしてるのか、むつはへらっと笑うと、どんどん進んでいく。
「あ、家がある、行ってみよ」
「ちょっ待っ‼湯野さーん」
颯介と狐は、むつに手を掴まれ哀れにも引きずられていく祐斗、として認識し苦笑いしながらついてきた。
家としての形を何とか保っている建物の壁には、びっしりと蔦がはっていて、周囲には、腰の高さほどもある枯れ草に覆われている。
「焼いちゃいたいね」
「物騒すぎます。ただの山火事じゃなくて、放火になっちゃいます」
むつと祐斗は、枯れ草を足で踏み道を作りながら進んでいく。
「そうね。消せる自信ないしな」
「コントロール出来ないって事っすか?この前は式神を燃やさずに蜘蛛だけ焼いたのに」
「式神は、わたしの一部みたいな物だけど、草はこんだけ大量だと一気に火が広がっちゃうと思う」




