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3話
助手席にむつを、後部座席に狐と祐斗。そして、運転をしているのは、颯介だ。今日はいつも通りに安全運転をしているので、祐斗も狐も安心して、話をしながら地図を描いていく。
むつは、ぐったりとシートに身体を預けるようにして座っているだけで、何かを言うわけでもなく、聞いているようにも思えなかった。
民家のない山道を進むばかりで、つまらなくなったのか、狐が話を始めた。
「…この辺りはな、戦に敗れた者たちの流れ着いた場所と言われてるのだ。山賊の子孫なんて言われ、田組から厭われていた事もあったそうだ」
まぁこれだけいくつも集落が点在していたら、そういう場所もあるはな、と狐がのんびりと祐斗と会話している。
「山賊ねぇ」
ぽつりとむつが呟いた。
「むつさん何か言いましたか?」
祐斗が聞き返したが、むつには聞こえなかったのか、返事はない。
「颯介殿、その道は右にそうすればまた集落がある。そのまた奥にもあるが…そっちはもぅ確か人は住んでないはずだ」
「やぱ、行方不明なんすか?」
「いや。年寄りばかりでな亡くなったり施設に入ったりだな。確か」