87/157
3話
「だいぶ熱が高いみたいですね」
握っていたむつの手を、そっと布団の中にしまってやると冬四郎は静かに立ち上がった。
「薬と適当に飲み物なんかを買ってしました。使ってやってください」
祐斗が社長にある程度の報告メールを送ると、冬四郎に社長からの連絡があったそうなのだ。それで、むつを心配し冬四郎はやってきた。
「帰るんですか?居た方がむつさんは喜ぶんじゃないですか?」
祐斗がそう言うも、冬四郎は仕事がありますので、と言うとさっさと出ていった。本当に届け物をしてむつの様子を確かめにだけ来た様だった。
「何か冷たいっすよね」
「仕事の合間をぬってこうして来たんだから、そうとも言えないよ」
颯介が冬四郎の持ってきた袋を祐斗に見せた。熱冷ましシートに解熱剤、むつの好きな炭酸飲料やスポーツドリンクなどが、沢山入っていた。
「宮前さんが来た事はむっちゃんには黙っておこうか。今の状態じゃ寂しがりそうだからね」
腑に落ちない気もしたが、祐斗はしぶしぶ頷いた。