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3話
ふかふかした冬毛の狐が温かく、むつは心地よくうとうとしていた。これならすぐに熱も下がりそうだと思った。
だが、寝付いてすぐに嫌な夢を見た。寝汗をかいたのか、Tシャツが肌にはりつく感じがする。起き上がろうとしても、だるくて頭が上がらない。
夢なのか現実なのかがよく分からないままに、うっすらと目を開けた。
ぼんやりとした視界に、見覚えのある、懐かしい顔が見えた気がした。
「しろ、ちゃ…」
重たい腕を伸ばして触れようとすると、優しく力強い手が、そっとむつの手を握ってくれた。そして、汗では張り付いた髪の毛をそっと払い頬に触れた手が温かかった。
むつは、安心したようにまた目を閉じて眠りに落ちていった。今度は嫌な夢も見る事はなかった。