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3話
札を埋め戻ろうとした祐斗は、何かに引かれるように、鳥居の方を向いた。ぼんやりとしか、見えなかったが女性のようだ。だが、瞬きをしている間にその姿は消えていた。気のせいだったのかもしれないが、そうじゃないのかもしれない。
その証拠に祐斗の腕には、寒さのせいではない鳥肌が立っていた。
腕をさすりつつ、社務所に入ると何故だか、ほっとした。
妖狐は居るし、勝手に住居用として改装されて居る場所ではあるが、暖かく安心出来る場所となっていた。
台所をのごきこむと颯介が、鍋を出したり冷蔵庫をのぞいたりしている。
「何か手伝いましょうか?」
「そうだなぁ…お粥とうどんどっちがいいかな?」
「うどんにしましょ。そうすれば俺たちの分もまとめて作れるし。狐たちにはおあげ乗せたらいいでしょ」
そうだね、と笑い颯介は鍋に水を入れて火にかけた。お昼も麺だったねぇ、と何だか懐かしむような言い方が祐斗には、面白かった。