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3話
「結局、何も掴めずか」
がっかりしたような颯介の声に、むつがにやりと笑った。式神を呼ぶとその手を開かせた。
「これは…蜘蛛?」
小さな蜘蛛がいた。死んでいるようで、もぅ動いてもいない。
「そ、狐さんが白い糸で包まれ始めた時にこれが居たの」
「けど、山の中なんだし」
茶を啜ってるむつの代わりに、狐がにやりと笑い、太い尻尾を振った。
「こいつらが、糸を出していたのだ」
颯介と祐斗は、黙った。
むつが、札を出しそれを蜘蛛の上に乗せるとあっという間に燃えた。
寝室に引っ込んだむつは、ポーチを持って戻ってきた。そして、颯介の前に座ると何も言わずに手をとった。
「こんなにしちゃったね…ごめんね」
ポーチから消毒液を取り出し、それで傷を消毒し清潔なタオルでふいて、傷薬を塗るとガーゼを被せて、くるくると包帯を巻いていった。
「本当にありがと。祐ちゃんは怪我とかしてない?」
いつになく優しげなむつに、祐斗はどぎまぎしていた。頬も赤いし何だか目も潤んでるようで、なかなか、ぐっとくるものがあった。