3話
神社に戻ると、むつは泥の付いた服を脱ぎ、同じく泥だらけの狐と風呂に入っていった。泥を落として、しっかりと暖まったのか、頬がかすかに赤い。
「むっちゃん、説明を」
「それより、狐さんは?」
座布団の上に畳んだ毛布を置き、その上に横たわる狐に近寄った。口元に手をかざしてみると、しっかりと呼吸もしていて、ただ寝ているようだった。
「式神の破片を見付けたんだ。それが、転々と山の中に続いてて、追った。そしたら、何かネバネバしたのが足に絡み付いて動けなくなった」
むつは、颯介の入れてくれた茶を一口飲み、湯飲みを手に持ったまま、再び飲もうとして口をつけずにテーブルに置いた。
「そした、それに引っ張られて転んでそのまま林の中に引きずり込まれた。わたしを助けようとして、狐さんが噛み切ってくれたけど今度はその子が」
「むつさんの代わりに引きずられて行ったって事?」
むつは、頷いた。そして、狐の規則正しく上下に動いている腹の辺りを撫でた。
「けど、急に動かなくなって、この子の身体の周りに白い糸が巻き付いていったの。すぐに切ろうとして…けど、横から急に凄い勢いで、何かが当たったの」
「あれは丸太のような物だったな」
「うん。で、飛ばされて落ちたのが、あそこだったの」
それで、髪の毛まで泥まみれだったのか、と祐斗は納得したようだった。