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3話
「何かやばそうだな。むつ殿は無茶をするのがお好きな様だ」
狐の面白がるような声がした。
林を抜け池の前から、むつたちを待とうかと振り向くと、すぐにむつが狐を抱えて走ってくるのが見えた。
「祐ちゃん、彼を‼」
むつが脇に抱えている狐を、リモコンでも投げるかのように祐斗の方に投げた。
「へっ?あっ…わわわっ」
何とか滑り込んで狐をキャッチした。狐を投げた事などすでに忘れてしまったのか、むつは、立ち止まると来た道を睨み付けていた。
何も起きない事を確認すると、むつは小走りに颯介たちの所に来た。
「むつさん、この子…」
身体に絡み付いている白い糸をむつは、むしりとっていく。顔についた糸を払っても狐は、ぴくりとも動かない。
「まだ、生きてる。気を失ってるだけ」
「帰ろうか」
颯介が車の方を指差した。誰も否とは言わなかった。