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3話
「遅いぞ人間」
いつの間に戻ってきたのか狐が、颯介の足元を走っていた。そして、むつからの伝言を伝えた。
「何だって?」
颯介と祐斗は立ち止まった。
「ま、待つんですか?」
息の上がっている祐斗は、膝に手を置いて、息を整えている。
「足場が悪い。慣れてない者にはキツい、それに仲間を取り戻したらむつ殿もすぐに戻ると…」
そこまで言うと、狐は姿勢を低くして林の向こう側を伺っているようだ。
「戻ってきた」
最初に見えたのは、式神だ。薄暗い林の中を全力疾走する、人間サイズのペラペラの紙。どう見てもただ事じゃない。
見慣れてるはずの颯介と祐斗でさえも、言葉もなく立ちすくんでしまった。
『走って追い付かれる‼』
ペラペラの紙からむつの声がした。
式神は、立ち止まる事もなく颯介たちを残して走っていく。
『「走れーっ‼」』
式神からの声と後ろからのむつの声が一緒に聞こえてきた。どうなってるのか分からないが、切羽詰まった様子に、颯介と祐斗も式神を追うように来た道を戻り始めた。