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3話
「あぁっ‼助かった‼」
髪の毛にも顔にも泥をつけた、むつは嬉しそうに笑った。颯介と祐斗に引っ張り上げて貰い、さっと上着を脱いだ。
「ありがと‼行こう‼まだ遠くないっ」
そう言うと、泥まみれの狐と共に林の方に走り出した。
「むつ!どこに行くんだ」
「狐さんが捕まった‼囮になって助けてくれたんだ‼だから、迎えに行かなきゃ」
振り向きもせずそう言うと、林の中に入っていき、すぐに見えなくなった。呆然としていた残された狐も、むつを追うように走り出したので、颯介と祐斗もその後を追って走り出した。
真っ白な式神がむつの後ろを走っているおかげで、見失う事はなさそうだが、なかなか追い付けそうにもない。
あとから走り出した狐は、もぅむつに追い付いてるのか、姿が見えない。
じきに、足音が聞こえなくなった。式神の後ろ姿も、木々に遮られて見えなくなってしまった。
だが、何処からか、ガサガサ、ザザーッと音だけは聞こえてきている。
「管狐、後を追えるか?」
袖から顔を出していた管狐は、首を縦に振ると、するすると音もなく木の葉の上を滑るように走っていく。