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3話
「狐さん、引っ張り出されたらロープ離して、わたしに頂戴よ」
「わひゃっひゃ」
狐が引っ張り出された時に、むつも両手を出し、しっかりとロープを掴んだ。そして、泥で滑らないように手首を回して巻き付けた。
「ひゃーっ」
式神は引っ張り出した狐を投げて、地面に落とした。そのまま、ロープに足を絡ませると、むつの腕を掴んだ。
「颯さん引いてーっ‼」
颯介が、力の限りにロープを引いた。ロープが食い込んで切れたのか、手のひらからは血が滲み滑る。祐斗も一緒になってロープを引く。
ずずっずずっとゆっくりだが、むつの身体が岸に近付いてきた。
「あっ‼」
むつが、急に片手を泥の中に戻した。
「何してんすか‼」
泥の中から細長い物を力任せに取り出したむつは、それを式神に持たせ、岸に戻らせた。
「ごめん、堪えてっ‼」
颯介と祐斗のロープが逆に引っ張られるように動いた。何とか踏み留まっているが、じりじりと滑っている。むつの方からも引っ張り、ぐいぐいと泥から出ようとしている。
「もうちょいーつ‼」
手を伸ばせば届きそうな所まで来て、式神がむつの腕を掴み、引っ張った。