3話
「むひゅろのうごかんれくえ」
「あ、ごめんごめん」
よく見てみると、畔で大小の式神がロープを引っ張っていて、それをくわえた狐をむつが抱っこしてる形のようだ。もぅ1匹の狐は見当たらない。
「どうしよ?わたしが動いてロープを掴むともっと沈むだろうし、泥で滑る。このまんま引っ張って貰うには狐さんがもたないと思う」
「悩んでても沈んでくだけだな。俺が中に入るんで湯野さんロープを」
「それじゃ二次災害だ、ダメ」
「むひゅろのいひょがなくては、なかあがあひゃふい」
「だよね。沈むの覚悟する?」
むつは、ちらっと林の方に目を向けた。
「まだ、大丈夫。…颯さん、ロープ掴んでて、式にロープを渡らせて狐さんを先に出す」
「そしたら、むつがっ‼」
「大丈夫、無理矢理にでもロープ掴むから、頑張ってよ颯さん」
むつが、そう言うと大きくなっていた式神がぱっとロープを離した。ずずっとむつの身体がまた沈み、慌てて颯介がそれをまた引いた。すでに、肩近くまで埋まってしまっている。
「っつ‼」
ロープが颯介の手に食い込んでいる。
式神が、すたすたとロープの上を歩きむつの前までいくと、ずぼっとペラペラの両手を泥に突っ込み狐の前足を掴んだ。