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3話
10分程で着いた場所は、採石場の様な場所だった。小さい事務所にも近くにも人が居ないようだったので、狐に言われるままに、敷地内に入っていった。
「あれだっ‼」
事務所の前を過ぎ、砂利の坂道を下るとさほど大きくはない池のようなものが見えた。だが見る限り、人が居るようには見えない。
「むっちゃーんっ‼」
颯介が大声でむつを呼びながら走り寄るが、どこからも応える声はない。
「沈んじゃったんすか?」
よろよろと付いてきた祐斗と狐も池の方に目を凝らしている。すると、何処からか、けーん、けーんっと鳴き声がした。
狐と颯介の襟から顔を出していた管狐が、その鳴き声の方に向かっていった。池の畔をぐるっと回って、水が流れ込んできている方に向かうと、泥に胸の辺りまで埋まったむつと顔しか出ていない狐たちがいた。
「あ、颯さんっ‼祐ちゃんも‼」