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3話
「やっぱり、狐たちが探しても見付からないって事は妖怪なんかが関わってるんだろうね」
「探しに行って、何か変わった事とかなかったんですか?」
狐は、思い出すように黙ってから蜘蛛が多かったな、と言った。
「蜘蛛?山ん中なら普通じゃ?」
「そうなんだがな。やけに蜘蛛の巣にばっかり出くわしたんだ。あとはやけに静かだったな」
祐斗が関係あるか分からないけどと言い、カレンダーの空いてる部分にその事をメモしていた。
「静かってこの辺、人も店もないんだからそりゃ静かでしょ」
「いや、そうじゃなくてだな。見ての通り山の中だ、それなのに猪も猿も居なかったのだ。いつも畑をよく荒らされると聞くのに、最近は全く聞かないくらいに動物が居ないんだ」
颯介にも祐斗にもあまりその不可解さが分からなかった。畑を荒らされないならそれにこした事はない。
「害獣駆除が入って逃げたとかじゃないんすかね」
「かもしれんな」
先に行こう、と狐はまた歩き出した。