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3話
くすくすと笑いつつ、颯介が先に風呂に向かった。祐斗は、動画サイトを見ながら菓子を頬張っている。
むつは、その様子をこっそり観察しつつ、携帯を見ている。だが、その視線は携帯ではなく、その向こうのようだ。
「先に寝るよ」
そう言うと、むつは布団をかぶった。
「いや、髪の毛乾かさないと」
「うん。面倒くさいしいいよ、ブレーカー落ちそうだしさ。おやすみ」
確かにブレーカーは落ちそうだ。早々に颯介が戻ってくると、祐斗もシャワーを浴びて、すぐに眠る事にした。テレビもなく、ワンセグの電波も入らない場所でする事などないからだ。
豆電球だけをつけておき、颯介と祐斗もそれぞれ布団を頭の方までかぶる。
むつは、本当に眠っているようで規則正しい寝息がけが、僅かに聞こえる。
狐たちも、もぅ寝ているのかわずかな物音もしない静寂にだけ包まれている。