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3話
狐の首根っこを掴み颯介が戻ってきた。
「どーしたすか?」
スナック菓子片手に炭酸飲料を飲んでいた祐斗が、驚いたように颯介と狐を交互にみている。
「むつさんの大声は?」
「こいつが入り込んでた」
「のぞきかよっ‼」
畳の上に落とされた狐は、しっかりとタオルだけは持ってさっさと出ていった。
「全く、どいつもこいつも‼」
スウェット姿のむつが入ってきた。まだ、髪の毛からはポタポタと水滴が落ちている。
ふわっとシャボンの香りがした。
「管狐も居たよ、まだこの子は喋らないし可愛いけどさ」
むつと同じ香りのする管狐が、颯介の襟元からするっと服の中に入っていった。だが、細長い膨らみはないし、颯介も濡れてるからと嫌がったりしない。
「ごめん、どうりで気配がないと思ったら。…ダメじゃないかまったく」
「ちゃんとしといてよね」
タオルでくるっと髪の毛を包むと、布団の上に寝転んだ。
「わたし…真ん中なの?」
すでに両端には、祐斗と颯介の荷物が置かれており、選択肢はなかった。
「これなら、何かあっても大丈夫ね」
「何があるって言うんですか?」
「あほな狐が来たりとか?」