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3話
式神が薄い肩の上に薄い手も置いて、祐斗でも足が置けるようにしてけれた。
「あぁりがと‼」
それを借りると、ようやく縁に手が届き、颯介が引っ張っりあげてくれたので、何とか屋根に登れた。
「って、むつさん、どうしたの?」
少し離れた場所で、肩を回して手首を降っているのが見えた。
「いえ、なんでも」
理由を知っている颯介だけが、困ったように笑っているだけだ。
下から式神に懐中電灯を投げて貰い、それを祐斗に渡す。視界は、あまり良くはなかった。夜だから、ではなく木々の枝があちこちから伸びていて、動くとその枝が目に入りそうで怖い。
「あぁ星は綺麗だね」
颯介が枝を避けるように真上を見上げていた。空には向井田市では見れないような星がしっかりと見えていた。
「冬だから余計にだよね」
むつと祐斗もしばらくは、黙って星に目を向けていたが、やがて首が痛くなり少し下の山の方に視線を向けた。
特に変わった様子はなさそうだ。民家もなく木々が繁っているだけなのか、ほんのりとした明かりさえ見えない。