3話
むつが照らすと颯介は、手近な枝を折り屋根の上を登っていく。長身でがたいの良い颯介が、登っても穴が開くような事も無さそうなのを確認出来、むつも祐斗も安心したように顔を見合わせた。
「颯さん、懐中電灯投げるよ」
「おっけ」
懐中電灯は、回転する事もなく上手く颯介の手に渡った。
「祐ちゃん、先に行く?それとも最後にする?」
「あの人形は、手伝ってくれますか?」
「わたしに出来る事しか出来ないよ。待っててもいいよ?式は下で待ってて貰うつもりだし」
不安そうな祐斗は、登ります、と言いむつに懐中電灯を渡した。そして先程の颯介同様に手摺に足をかけた。
だが、そこからがなかなか、進まなかった。成人男性の平均より少し小柄な祐斗の手は、跳躍しても縁には届きそうもなかったのだ。運動神経が人並み有るか否かな程度な事を承知しているが故に、行動に移せない。
そうして、祐斗がもたもたしている間にもむつは、懐中電灯を式神に持たせさっさと登っていった。むつも祐斗とは身長は変わらないが、運動神経はそこそこ良いので、難なく行ってしまう。
「えぇーっ‼そんなぁ」
祐斗の声に哀れに思ったのか、そろそろと式神がやってきた。
「式の肩に足をかけなよ」
むつが、そう上から言ってくれた。