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3話
むつは、その人形に自身のペンライトを持たせて、先を歩かせた。さほど、広くないので、すぐに拝殿の前に着く。
ペンライトの光が、賽銭箱の前や柱、屋根を照らしていく。屋根の方は、木々が生い茂っているようだ。
「誰から行く?」
むつと人形が、同時に振り返る。むつも色白だから、紙は真っ白にのっぺらぼうでぺらぺら。何だか気味の悪い。
「俺から行くよ」
そう言うと、颯介は懐中電灯をむつに渡した。懐中電灯とペンライトで照らされた場所を登るらしいが、階段があるわけでもなく颯介は少しばかり悩んだ。
むつは廊下部分、そして屋根の縁の部分と順番に照らした。
「ここか、賽銭箱に足をあけるか、しかないよね。罰当たりな事だけど」
調査の為なら神様も怒らないでしょ、とつけくわえた。
賽銭箱に足を乗せるのは躊躇われるのか、颯介は、廊下の手刷り部分に足をかけ、跳躍した。縁をしっかりと掴めたようで、指の力だけで、自身の身体を持ち上げた。
「すごいっ‼」
むつが感心していると、うっと低く呻く声が上から聞こえた。伸びっぱなしの気の枝に顔を突っ込んだようだ。