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3話
上着をさっさと着込み、外に出るようにとスニーカーを出すむつ。
「靴出して、何処まで行くつもり?」
「じゃなくて、足音消せるよう」
颯介と祐斗もその言葉に急に表情を引き締めた。山の奥の奥に居るかもしれないとは言え、真っ暗な闇だけの世界。何処から何が来るか分からない分、自分の足音にも気を付けなくてはならない。
しっかりと靴紐を結び、三人は静かに外に出た。社務所から漏れる光がほのかにある他には、何も見えない。
「神社から出なければ良いよね?」
「何処まで行くつもりですか!?」
普通に喋るのさえも、気になるのか、むつの小声につられ祐斗の声も小さい。
「拝殿まで。屋根に登って上から周りをみてみたいんだけど」
「気配を探りたいって事か。俺も一緒に登る。祐ちゃんは…登れそう?」
置いて行かれてはまずいと、祐斗は一生懸命に首を縦にふった。
むつは、ポケットから出した人形に切られた紙を両手で包み、ふぅっと息を吹き掛けた。そして、ヒラヒラと落ちていく紙は、むくむくっと大きな人形になり、しっかり二本足で立っていた。