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3話
お代わり、と器を差し出してきた狐の為に具材をよそいながら
「山の奥には人が住んでるの?」
と、むつが聞いた。
「ふむ、何軒かかまってあるのが、2ヶ所ほどあるな」
ついでにと、祐斗と颯介の器にもよそい、お玉を持ったまま、むつは黙った。
「また、人が消えるのかな…」
「可能性はありますね、けど、気味の悪い事が続いてるんですし出歩く人も居ないでしょ。ましてや何も無さそうな田舎なんだし」
「確かに、それなら、わたしが出ていけば何かが姿を現すかな?」
「ダメだ絶対に‼」
颯介の意外と大きく太い声に、むつも祐斗も驚いた。普段が穏やかなだけに、こういった声が恐ろしく聞こえる。
「危険すぎる」
「なら、どうする?昼間は何も感じなかったんだよ?夜に動くなら、こっちもそれを狙うしかないよ」
「昼間でも、人は消えている。明日にでもその山の方を案内しよう。人は夜目がきかぬ、颯介殿の言うように危険な事をさせるわけには、いかない。ましてや、まだ何かも分かっていないのだ」
狐のもっともな意見を聞き、むつもただ頷くしかなかった。