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3話
とんとんとんっとリズミカルな音を立てて、むつが次々と野菜を切り、鍋に入れていく。野菜の半分くらいまでの水を入れ火にかけた。
「むつ殿は料理が出来るのだな、我は卵焼きが食べたいぞ」
むつは、笑うと卵を3つ取り出しボウルに割り入れて、ほぐし始めた。
「それよりも、まだ時間がかかる。その間にさくっと見回りして妙な物を探ってきてくれません?焼いたおあげも出すからさ」
むつがそう言うと、狐はさっさと外に出ていった。
「扱いがうまいんですね」
狐が出ていくと祐斗が顔を出した。
「近いから、かな?」
「へ?」
「颯さんは?」
「寝る部屋の掃除してます、で、綺麗なシーツも出して貰えたので布団のカバーつけたりしてますね」
葱を切り終えたむつは、卵の中に葱を入れ、それから鍋の蓋を少しずらした。野菜の煮える甘く優しい香りが漂ってきた。そして、あっという間に玉葱の微塵切りを作ると、鶏肉を細かく切り始めた。
「んー調味料はそこそこあるね、祐ちゃん卵の黄身だけを入れて。卵白はこっちに、で、お醤油を少し垂らして混ぜて」