2話
車を出せる颯介に迎えに来て貰う、という事でむつと祐斗もそれぞれ家に帰り、しばらく分の着替えなどを用意する事になった。
自宅に戻ったむつは、適当に着替えを鞄に詰め込み、玄関に向かった。そして、少しだけ悩んだ末、ビニール袋にハイカットスニーカーを入れて、鞄に詰め込んだ。
颯介からの電話が鳴り、鞄と布に包まれた細長い物、冬四朗から借りているマフラーを持ち下に降りた。
「ごめん、お待たせ」
後部座席に鞄を置き助手席に座る。
「仕事だってのにヒールのある靴で大丈夫なの?」
「ブーティーは走りやすいよ。ヒールも低いやつだしさ…一応スニーカーも持ってきたけどさ」
「まったく。…それじゃあ祐ちゃんを迎えに行こうか」
むつのマンションから祐斗のマンションまでは、少し距離がある。帰宅ラッシュの時間なのか、大きな道に出るとすぐに渋滞に巻き込まれた。
「なぁ、何で宮前さんが仕事を持ってくるって思ったんだ?」
「タバコを吸ってる時に連絡があった。ニュースで取り上げられてるって事はお手上げ状態って事よね、で焦ってる。誰かが、しろーちゃんに指示を出したんだろうさ」
むかつくからタクシー使ってやったぜ、とむつが忌々しそうに言った。