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2話
冬四朗に教えられた通り駅に向かいつつ、ふっとむつは顔を上げた。辺りをキョロキョロ見回しつつ、駅まで行くと小さなロータリーに停まっていたタクシーにさっさと乗り込んだ。
「向井田市駅までお願いします」
ドアが閉まり、ゆっくりとタクシーが走り出すとむつは、資料館から持ってきたパンフレットなどを見始めた。だが、それもすぐにやめ目を閉じた。
揺れに身を任せつつ、むつはぼんやりと考え事をしていたが、あまり集中出来ていないのか考えがまとまらない。
何か思い付いた事があったが、風で舞う木の葉のように、あっという間に散らばっていった。
パンフレットを鞄にしまって、携帯を取り出し、社長にメールを送った。今から戻る、とだけ。返信はなかった。
40分もすると向井田市駅に着いた。支払いをし、きっちりと領収書も貰い、むつはよろず屋に戻る前にコンビニに立ち寄り、タバコと飲み物を買った。