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2話
ふっと息をはいて、表情を緩めた冬四朗は
「状況の報告だけはくれな、あとちゃんと領収書とかも貰っとけよ」
と、言い足早に去っていった。
むつは、しばらく小さくなっていくその背中を見ていた。そして、くるっと方向をかえて、資料館に向かった。
図書館やら小ホールなどが一緒になっている複合施設のようで、子供連れの母親などが出入りしているのが見えた。
正面玄関は広く、すぐ目の前に案内板が置いてある。資料館と図書館は、2階に隣り合っているようだ。右手にすぐにエレベータもあったが、むつは
(何の為に左右に階段があるんだ?)
そんな、どうでもいい事を気にしつつ、左右を見比べてむつは左の階段を登り始めた。