2話
「ねぇ…ここ、函納市はしろーちゃんの勤務地じゃないよね?交番勤務の時に居ただけよね?そして、わたしが降りてから近くに居たよね?どうして?前も仕事を持ってきたのしろーちゃんだった、何で?」
「何でそう思った?」
先程までにこやかだった冬四朗の表情が、険しいものに変わっていた。
「何となく、言いたくないなら聞かなかった事にして。けど…」
むつは、言いかけた言葉を飲み込んだ。むつ自身も言いたくない言葉だった。
「信用出来ない、か?」
「うん。去年からそう、何か、変な気がしてる。気にしすぎかもだけど」
「終わってから話すじゃダメか?どこまで話して良いのかは、俺だけの判断で出来ない部分もある」
「色々、絡んでくる事なの?」
「そうだ」
冬四朗は、寒さで赤くなっているむつの頬をそっと撫でて自分のマフラーをむつに巻いた。
「風邪、ひくなよ。今からは本当に戻る。何かあってもすぐには来てやれない。…大丈夫か?」
「…ん、大丈夫」
自分でも驚くほどに、弱々しい声。むつは、頭をふると、もぅ一度、大丈夫だから任せといて、と明るく言った。
それでも、冬四朗の表情は険しさを残したらままだった。