2話
「結局、また来て貰っちゃったね。仕事の方は大丈夫?」
「まぁ、な。わりと自由がきくんだよ。で、お次は何処に?」
むつが、シートベルトをしめるのを待って、ゆっくりと細い道をバックのまま冬四朗は慎重に県道まで出た。
「資料館があるよね?そこ、あと人が居なくなってる所にも」
「なら、人が住んでる方に行くか。函納市は、かなり広くてな村みたいにいくつか人が住んでるエリアみたいなのがあるんだよ。ま、本当に市って枠組みが無ければ村だな、村」
むつが降りた信号の所まで戻り、そこを左に曲がると一車線しかない道の両サイドに、ぽつぽつと民家が見えてきた。
家と家の間隔が広いのは、土地が余っているせいなのか、畑も多いが、寂しい様な場所だった。
「過疎化が進んでるんだね」
「そうだな、けど山の方はどこもそんな感じなんじゃないのか?」
「ん、かもね」
くねくねとした道を走り、民家の隣には牛舎のある家が増えてきた。そして、田んぼの広がる所に出た。高い建物は2階建ての民家のみで、あとは端から端まで見渡たす限り田んぼで、その遥か向こう側にまた、家が並び、その裏手に山がそびえていた。
「ちょっと地元に似てるだろ?」
「もっと家も人も居たけどね。しろーちゃんは帰ったりしてる?」
「正月と盆くらいはな。むつも、たまにはうちに来いよ。うちの母親が気にしてたからな」
「ん、まぁそのうちに」
冬四朗の運転する車は、田んぼの中を通り山の方に向かっていく。そして、分かれ道で止まった。