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2話
「なんと、むつ殿は腐ったカステラを好むのか‼人間とは変わっている」
ちょっぴり哀れむような視線を狐たちが、むつに向けているにも関わらず。それに気付かない、むつはほんのり頬を赤くして冬四朗を見つめていた。
「いや、抹茶味なんですよ狐さん。むつはね、昔から抹茶が好きだったもんで」
むつが欲しがってると思ったから買ったが余計だったか、と冬四朗は残念そうにしていた。
「なら、わたしが食べるから」
と、むつが箱を受け取ろうとしたが、さっさと狐たちが取り戻していた。
「抹茶とな、それなら良し」
いくつか箱を開けて、中身を確かめている狐たちの尻尾は、愉快そうにゆらゆらと揺れていた。
「なぁむつ、狐の好物っておあげさんじゃないのか?これも時代か?」
「おそらくねぇ」
狐たちを見守る、むつと理解が出来ないと悩む冬四朗をしりめに、狐たちはカステラを分けあいながら食べて行く。
「さて、狐さんたち、約束守ってくださいよ。わたしたちは、そろそろおいとましますんでね」
そう言い、むつと冬四朗は社務所を出ていった。