2話
険しい目付きの狐たちに、引けもとらずむつは堂々と
「陰陽師をしております」
そう言うと、さっと狐たちは炬燵から出てむつを取り囲んだ。だが、むつは落ち着いた様子でもぅ一口、茶を飲んだ。
「あなた方の悪戯なのですね。そうわたしを警戒すると言う事は」
それなら、あっという間に解決だ、とむつがくっくっくと笑う。だが、特に何かをするわけでもなく、湯飲みを両手でテーブルに戻した。
「あら、カステラもぅいらないんですか?貰っちゃいますね」
カステラを切りもせずに丸々、口に放り込んだむつは、しばらく黙って口を動かしていた。そして、また茶をすすると、すぅっと目を細めた。
「話して貰いましょうか、知ってる事を」
にっこりと笑うむつだが、声だけは低くとてもの事、何かを頼む態度には見えなかった。
狐たちは、そろそろと炬燵に戻るとふぅっと息をついた。そして、1匹の狐が躊躇うように話を始めた。
「ここ、函納市は見ての通り、なぁにもない場所だ。だから最初、若い者らが居なくなったのは東京にでも出ていったのかと思ってた」
そこまで話すと、湯飲みを手に取った。だが、ね、とその続きを違う狐が引き継いだ。