2話
大きな狐に連れられて、社務所に入ったむつは、驚きしばらく声も出せなかった。そこには、他にも狐が2匹ほどいて、炬燵に入ってゆったりと茶を飲んでいたのだ。
「これは…すごいねぇ」
社務所も一軒家の様に過ごしやすそうだ。そして暖房がきいていて暖かい。
「おあがりな」
「あ、は、はい」
むつも炬燵に入った。
外を歩いてきたせいで、すっかり冷えていた足が、じんわりと暖まってきた。
むつを連れてきた狐が、むつの前にも湯飲みを置き切り分けたカステラも個々の前に置いてくれた。
「カステラかぁ嬉しいよ」
そう言うと、狐たちはカステラを器用に一口サイズにして口に運んでいく。
「はぁ、あの、狐もカステラとか食べるんですね」
「そりゃあ、人に化けて生活をしているから、人が食べる物を食べるよ」
「うん、美味しいカステラだ。それで何か聞きたい事があるとかって言ってたね。なんだい?」
自分の分を平らげ、むつの分のカステラを眺めている狐の皿にカステラを乗せてやると、にんまりと笑った。そうすると、むつの方も肩の力が抜けたのかようやく茶に口をつけた。
「この辺りで、人が急に居なくなる事が多いと聞いて調べにきたんです。何かご存知では?」
「ふむ、ただの人ではないようだな」
3匹の視線がむつに集まった。