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2話
大きな木の根本に、小さな鳥居が置かれているのが目につくようになってきた。そしてすぐ、コンクリートだった道が、石畳に変わっていった。
こつーんこつーん、とむつのヒールの音だけが、響いていた。
大きな鳥居の前まで来ると、その先にゆるやかな石段が続き境内に出るようになっていた。
辺りを見回したむつは、石畳の道からそれて、舗装のされていない土の上を歩き神社に向かっていった。
(なんと言うか…村の外れの神社って感じがするよな、これなら人も滅多に来る事はないだろうよ)
そっと本殿の後ろまで歩いて行った所で、一斉に灯籠に火が灯った。
(狐さんは本当だったか)
火が灯った、という事はむつの存在にも気付いているという事だろう。むつは、諦めたように、ガサガサと枯れ葉を踏み締め、本殿の前に出た。
「狐が住み着いてるというのは本当の様だな、出てきてはくれないか?」
むつが声をあげると、手水舎の前にぼんやりと人影が見えた。
「あ、良かった」
むつは、笑顔をみせ人影に近付こうと足を踏み出したが、すぐに立ち止まった。