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5話
むつは、すくっと立ち上がると持っていた鞄からA4サイズの封筒を取り出し、それを冬四郎に押し付けた。
「んーまぁ何となく分かったかな」
「これは?」
「請求書です。わたしの病院代も含めてありますからねっ‼」
「何、怒ってんだよ」
すぐにでも帰って行きそうなむつの手を冬四郎が掴み、座らせた。まだ、冬四郎は手を離さない。
「これからも、お前の所に警察が絡んで仕事の依頼は入っていくぞ」
「何で?沼井の出世の為ってか?」
「そうだ。俺も山上さんも利用されるつもりはないけどな」
「困ってる人の為になりたいんでしょ?うちの社長もあれで、お世話やくの好きだもんね」
「分かってるなら、良い」
むつは、じっと掴まれたままになっている手を見ていた。それに気付いた冬四郎は、すぐに離した。