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5話
その一言にむつは、耳まで真っ赤にしてうつむいた。完全に冷たくなった紅茶を飲み干して、空になったペットボトルを横に置いた。
「あの土地は、何かある。山上さんはそう言っていたけど、そうなの?」
「もとは、神を納めると書いて神納だったみたいだからね。あそこベッドタウン計画が出てるんでしょ?」
「あぁ。その業者やら政治関係やらと沼井さんは繋がりあるからな」
「邪魔になるモノを排除する為が今回の仕事だったわけね?業者か何かがあれを眠りから起こした…うちの社長がけしかけたわけじゃないよね?」
「それは違う。絶対にだ」
冬四郎は一息で残りのコーヒーを飲み干した。その横顔は、以前にもみた険しい表情だった。少しだけ、怒っているようにも見えたのは、むつの気のせいだったのかもしれない。
すぐにいつもの笑顔に戻って、むつの頭を撫でていた。
「もう、体調はいいのか?かなり酷い状態だったって聞いてたけど」
「大丈夫。誰かさんは、差し入れだけで部屋にも上がらなかったから、どんな状態かなんて分からないんじゃないの?」
「嫁入り前でどーのって前に言ってただろうが」
「確かにね」