5話
「そうだ。知り合いに頼まれたからだな」
「知り合いって…ん?てか、ちょっと待って。先ずさこの不可思議さに最初に目をつけて話を持ってきたのが、その知り合いよね?その人は、普通の人?それともしろーちゃんみたいに、何か知ってる人?」
冬四郎は、困ったように笑った。
「うちの本部長が誰か知ってるか?」
早くも冷たくなりつつある紅茶を飲み、むつは首を振った。
「沼井だ。彼から話が俺の所に来た理由はな、山上さんの同期でな、俺は山上さんの部下だったんだよ。それ繋がりだな、山上さんは…ってどうした?」
むつが眉間に皺を寄せて、じっと冬四郎を見ていた。
「えーっと。本部長が沼井さん。で、その山上さんとやらはどなた?」
今度は冬四郎が驚いていた。
「むつは自分とこの社長の名字も知らないのか?」
「えーっ‼知らなかった…いや?聞いた事、あったっけ?そこそこ付き合い長いんだけどなぁ」
「んで、続けるぞ。大丈夫か?」
あれー?と首を傾げているむつを見つめながら冬四郎は笑っている。
「で、三人で飲みに行った時に沼井さんから山上さんに話をして、それならって事で俺が行ったんだよ」
「何でわざわざ?」
「そりゃ、山上さんが警察と繋がりあるのを知られたくないからだろ」
「どうして?」
「まぁ…嫌な思い出もあるからなんじゃないかな?俺も何か口実つけて、むつの顔見たかったしな」