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5話
むつが冬四郎ときちんと会ったのは、函納市から戻ってきてから1週間も過ぎた頃、冬四郎から連絡があり、会う事になった。
久し振りに外に出ると、空気の冷たさに頬が痛くなるようだった。
待ち合わせの場所は、喫茶店などではなくむつの自宅近くの夜の公園。冬四郎の仕事終わりに、という事だ。
むつは、公園に入る前に自動販売機で暖かいコーヒーを二本買った。冷めないようにポケットに入れ、冬四郎が居るであろう、ベンチの方に向かう。
流石に冬の公園には、人気がない。だからこそ、選んだ場所でもある。
「お、むつか?」
街灯の下のベンチの前で大柄な男が、コートのポケットに手を突っ込んで立っている。
「お疲れ様、ごめん。待った?」
「いや、そうでもないよ」
二人はぎこちなく、少しだけ距離をあけてベンチに座った。