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5話
当初言っていた通り、むつは休みを取っていた。なので古びたいつもの事務所には、颯介と祐斗しか居ない。
あの後むつは、熱が上がっていたにも関わらず、泥だらけだの煤がついて臭いだの、あげくの果てには髪の毛がぼさぼさだからとシャワーを浴び、髪の毛もしっかり洗っていた。
だが乾かす前に寝てしまい、さらに熱が上がる事になってしまったのだ。
蜘蛛に噛まれた数ヵ所の傷は、紫になっていたがほどなく消えるだろう。
祐斗は、むつの居ないデスクに目をやって、こっそりとため息をついた。迷惑料だと言われ、報告書や請求書のまとめを言い渡されていた。
「むつさん居ないと仕事が多い気がするんですが」
コーヒーを飲み干した颯介は、笑いながらおかわりをいれるためキッチンに入っていった。
「それだけ、むっちゃんの仕事量があったって事かもね」
「むつさん、まだ休みなんですか?」
祐斗は、コーヒーのおかわりの代わりに冷蔵庫から炭酸飲料を取り出した。
「それ、むっちゃんのだよ」
「バレないと思います」
「バレてるは、どアホぅ」
やけに低い位置から声がした。