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4話
「あ、足が‼わたしの足がぁ‼」
「無駄じゃなかっただろ?炎は悪を浄化してくれるのさ」
普段と変わらないような口調だが、それでもむつは無表情だった。炎を熱がりもせずに、蜘蛛の頭にのぼったまま、体液の付着した日本刀をぬき、火で炙る。
ぱちぱちと音をたてて、残っていた体液が焼け、焦げ臭いような異臭を発した。
「そう。何も残さずに燃やし尽くす」
ごぉぉぉっと突然、炎の勢いが増しむつごと、蜘蛛を取り囲んだ。
「お前もろともか?」
「かもしれない……けど、お前みたいなのと心中だなんて勘弁だな」
むつは、にやりと笑った。
蜘蛛とその上に立っているむつの姿が、炎に包まれるのを颯介と狐が見ていた。
「いいや、お前も死ぬんだ」
ごぉぉっと更に炎の勢いが増した。
颯介と狐の居る場所からは、火柱をあげて燃える炎しか見えない。蜘蛛がどうなったのかも、むつの安否もここからでは確認出来ない。
パチパチと焼ける音と香ばしいような、焦げるような臭いが漂う。
燃え盛る炎の中で、うっすらと見えるのは蜘蛛の身体がだんだんと小さくなっていく様子だけだ。