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4話
肩を揺すれば、かっくんかっくんと人形のように首を揺らすだけで、嫌がる素振りもなければ、声もあげない。
「おい‼祐斗っ‼」
ばちんっと颯介の大きな手が、祐斗の頬を張った。ぐらりと倒れたが、自ら起き上がる事もせずにいる。
本当に人形のようだ。
「祐斗殿はどうなってしまうのだ?」
狐の声に返事をする事が出来たのは、むつでも颯介でもなかった。
「どうにも出来ないわよ」
炎に焼かれ、黒く煤けていた蜘蛛だ。
しぶといようで、むつと違ってはっきりと喋れる力が残っているようだ。
「言ったでしょ?蜘蛛を飲んだのよ?彼を動かせるのはわたし。さぁ…役に立って貰おうかしら?」
祐斗は、のろのろとした動作で起き上がると、蜘蛛の方に向かって歩き出した。
「何をするつもりだ?」
「わたしの餌になって貰うの。そしたら、今度こそあんたたち皆殺しよ」
ころころと声をあげて笑う蜘蛛。焦げた足に力を入れて、ぐぐっと起き上がると祐斗の方を向いた。餌が向かってくるのをただ、待っているのだ。