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4話
「毒の効いてる身体で何が出来るっていうんだい‼餌らしく大人しくしてなぁ」
長い足を動かして、物凄い勢いでむつに迫ってきた。むつはすぐに体勢を整えて走り出す。だが、蜘蛛に噛まれた傷口も痛むし目が霞む。
「ほらぁ、そんな身体で無理をして」
「ちっ」
鬼の顔で可愛らしい声。それだけで不気味だった。
むつは、ポケットから札を出して顔に向けて投げつけた。見事に命中した札はあっという間に炎に変わった。
たいした効果はない。だが、怯んだその隙に距離をとる事は出来た。それでも次の手立ては浮かんでこない。
颯介に引っ張られ、枯れ草の中に身を隠したが無駄な事だろう。
「どうする?」
「何にもっ…浮かばない。札も式も品切に近いし」
長い距離を走ったわけでもないのにむつは、ぜぇぜぇと肩で息をしている。
「てか、あのバカが近くに居るから…あぁ、あいつもどうしたら正気に戻るんだ?蜘蛛を飲まされてるってのも本当なのか?」
美女が巨大蜘蛛になったというのに、祐斗は相変わらずぼんやりとした表情のまま、蜘蛛の側にぴったりついている。