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4話
女の髪が風もないのに舞い上がった。
そして、みしみしと骨が軋むような音を立てて腕が伸び、横っ腹を食い破って黒い足が出てきた。そして小さかったはずの口は耳の方まで裂け、大きく開いた。
「お前たちを餌にわたしは強くなる。そして、生き餌として使ってやろう」
大きな口からは長い犬歯が見えた。
めきっめきっと人の皮を骨を破り出てきたのは、いつかの夜に遭遇した巨大な蜘蛛だった。いや、その時よりも一回り大きくなっているようだ。
「ふんっ、そんな顔じゃ男なんて寄ってこねぇぞ」
鬼のような顔に虎のように縞の入った胴体に長く太い産毛の生えた足。それが、女の姿だった。
「肉なら何でも良いんだよぉ」
ぶんっと太い足が、むつに向かって振り落とされた。避けたつもりだったが、地面がずんっと揺れ衝撃で生じた風で、むつはよろめいた。