129/157
4話
「その狐も身体の大きな男も、この子たちの良い餌になりそうね」
女の顔は暗くてあまりよく見えないが、満足そうに微笑む様子が分かる。
祐斗は操られているのか、ぼんやりとした表情で、ただ女の隣に立っている。
「怖いかしら?大丈夫。この子たちみたいに、ちょーっと蜘蛛を飲み込めばね。何も考えられなくなるわよ」
女の言葉にむつと颯介は、驚いたように顔をあげた。
「たち、だと?」
「そう。あの優しい警官とこの子」
女の足元には、あの警官の頭部があった。それを可愛がるように抱き上げると、頬擦りをしている。
最早それは、人の顔の皮を被っているだけのようだった。切り落とされた時にはあったはずの肉はなくなり、眼球もなく、そこから鋏のような顎が出ている。
「蜘蛛の食事の仕方、知ってる?貴女は賢いみたいだもの知ってるわよね?」
抱き上げられた頭部から出ている細い足が、喜ぶように震えた。
「消化液をね、体内に流し込んで肉を解かして食べていくのよ。ここに居るのは、普通の人間、狐じゃないもの。きっと素晴らしい力になってくれるわ」