4話
「颯さん、使って」
いつの間にか背後に居たむつが、颯介に日本刀を握らせた。
「ありがと、よっ‼」
飛びかかってきた蜘蛛を、刀身を抜き様に真っ二つに切った。粘りけのある体液が、顔にかかったのを袖で拭った。
「腕の見せ所だよ」
余裕そうなむつに安心したのか、颯介もにやりと笑うと肩の力を抜いた。颯介の隣に立っているむつは、沢山の人形を空に向かって投げた。
ヒラヒラと上にあがった人形だが、落ちる際には勢いを持ち、蜘蛛の胴体や足を切り落としながら地面に刺さっていく。
「社務所でやったような事、出来ないの?相手の位置が低すぎて腰痛くなりそうだな」
「山ん中よ‼」
横から飛び出してきた蜘蛛を殴り落として、蹴りあげながらむつが、さっと周囲に視線を巡らせた。
「燃え移る可能性大っ‼」
ぐじゃっと踵に力を入れ蜘蛛の頭を潰しながらむつが言った。
「やるにしてもこの状況みてよぉ」
むつは手にしていた札で蜘蛛を切り刻み、颯介は日本刀を振り上げ蹴散らしていても、数が多すぎて後退せざるを得ない状況だった。
後ろを見ると、狐を吊るしている糸もようやく解けそうな所まできていた。式神を狐の方に向かわ手伝わせた。