4話
「仲間の声だ、遠いが分かるぞ。居場所が知れたようだ」
狐の声に少し緊張と恐怖の様な物が混ざっている事に、むつは気付いた。そっと撫でてやると落ち着いたようだ。
狐から聞き出した場所は前に1度、巨大蜘蛛と対峙した所に近い。
颯介は、安全にそれでもぐっとアクセルを深く踏んでいた。開けっぱなしにしている窓から、ヒンヤリとした風がびゅーびゅーと入ってくる。その風の音に混じって、けーんと狐の鳴き声が小さく聞こえてくる気がした。
その場所に近づくりつれ、気温が一気に下がってきている気がした。山の中だから、というだけでは無いだろう。
ヘッドライトが照らす場所は、限られていて何処から何が出てくるのか分からない恐怖があった。
「どうする?」
「ん?たぶん、罠はって待ってるだろうから…正面から行こうか」
カチンッと音がして、小さくオレンジ色の炎が、むつの顔を照らす。普段なら車の中でタバコを吸わないのに珍しく吸っている。狐たち同様に緊張から落ち着かないのだろう。
煙が車内に充満しつつあったが、颯介は、何も言わなかった。それどころか、むつのくわえていたタバコを取ると一口吸った。
颯介もやはり、落ち着かないのだ。