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4話
車を戻る前に自動販売機で買った、温かいコーヒーを飲みながらむつは、膝の上に座らせた狐で暖を取っている。
車内はとても静かだった。ただ、聞こえるのは、コーヒーをすする音と溜め息。
「ふ…ふへっくしっ…あー」
すんっとむつが鼻をすすった。
「今度は風邪か?」
「かもしれない。仕事が終わったらゆっくり休みを取るしかないっぽい」
するするっと管狐が、むつの首もとまでのぼってきて細い尻尾を巻き付けた。
「おぉ温かい‼わたしも何か欲しいな」
「管狐は飼ってるわけじゃないよ」
「それなら我らが一緒に住んでやろう」
膝の上の狐が、にんまりと笑いながらそう言ってはくれたが、むつがきっぱりと食費がかかるし無理と言った。
「では、むつ殿と働くぞ」
「ダメでしょ流石に」
のんびりとした会話を続けていたが、狐が急にぴんと耳をたてて起き上がった。
むつたちには聞こえなくとも狐たちには、何が聞こえているようだ。