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4話
むつが、にやりと笑うのを颯介は見えずとも想像出来ていた。
「危険だと思ったらすぐに戻るか鳴くかして知らせてくれる?仲間たちなら、あなたの声で居場所わかるよね」
優しく撫でられ機嫌が良いのか、狐たちは尻尾を振りながら頷いている。
「ありがと、頼りにしてるね…じゃあ行くよ?」
早速、颯介から受け取った頭部の札を剥がして地面に置いた。すると、途端に長く細い足を懸命に動かし走り出した。
やはり、山の方に向かっている。それを見て狐もさっと走り出した。
「後は、しばらく待つのみ、か」
「そうね。はぁー冷えてきた」
髪の毛も乾かさずに出てきてしまったむつは、寒そうに身体を震わせた。
「車に戻って待とうか。少し窓を開けておけば鳴き声も聞き逃さないよ」
颯介にそう言われ、むつと狐たちは車に戻った。