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4話
むつの動きを追うように、警官の身体もゆっくりとむつの方を向いていく。それを確認し、颯介が背後に回る。
颯介が足音もなく警官に近寄っていった。もう手が届きそうな所で、急に振り向き、引き金を引いた。
パンッと乾いた音がした。
「颯さんっ‼」
颯介は、とっさに腕を振り上げて軌道を反らしていた。警官の動きが止まっているうちに、むつが拳銃を持っている腕を切り落とした。そして、日本刀を振り降ろしざまに膝の後ろも切った。
切り落としはしなかったが、バランスを崩し、ドシャッと音を立てて倒れた。
「むっちゃん躊躇い無さすぎ」
「だってもぅ人じゃない」
むつは、そう言いながらポケットから取り出した札で血を拭い、鞘におさめた。
「これでもう立てないはず」
左腕からころげ落ちた首が、恨めしそうに二人を見上げていた。
血を拭った札を持ち投げようとした時、風もないのに、首が動いた。二人が何事かと見ていると、右目や耳、首筋などが、めりめりっと内側から破られ細い足が出てきた。
「やっぱり蜘蛛か」