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4話
むつたちの心配など気にもしていない狐は、駐在所まで行くと引き戸を開けて堂々と入っていった。人に化けているから、堂々と行って当然なのだが。
「すみませーん‼誰かいらっしゃいませんかー?」
狐が声をかけると、奥から警官が出てきた。昼間に見た時とは様子が違って、不機嫌そうだった。
「何か?」
「わたし、湯野さんの友人なんですがね。こちらに、湯野さんのお知り合いで谷代さんが居るはずなんですがね、お会い出来ませんかねぇ?」
狐は愛想よく、すらすらと喋っていくが、警官はにこりともしない。
「知り合いが何の用だ?」
「谷代さんへの伝言を頼まれましてね」
「携帯があるだろう。それで伝えるように言っておけ」
そう言うと、警官は用件は済んだとばかりに奥に引っ込もうとしている。
「いえ、会って話した方が…」
「さっさと帰れ‼」
「会わせられないんですか?ここに居ますよね?会うかどうか聞いて来て貰えませんか?」
警官が怒鳴ろうとも狐は引かなかった。